朝の地震で、ふたつはベッドを飛び降りていき、吾輩もそれに続こうとして、止まって、逡巡する。わたしが降りるあいだもわずかに揺れていた。リビングへ行くと家族はシャワーを浴びていて、気がついていないらしかった。しばし一人。震源は茨城だった。
行き交う人びとが広場から屋根のある駅舎へ入り傘を閉じるしぐさをじっと見ていれば、みんなどことなくおかしい。なにがおかしいわけでもないが、よく見れば、人はみんなおかしくできている。ほとんど同じ青いチェックのシャツを着てたまたま連れ同士のような距離にいる他人のおじさん二人、折り畳みの傘を閉じたらものすごい勢いでしぶきが飛んだ女の子、みどりの窓口から出てきた連れの男性にかなり間を溜めてから「そういうこと」と指をさす女性、犬をのせたベビーカーに慎重に覆いをかけて傘をささずに広場へ戻っていく男性とその隣で傘をさしてついていく男性、荷物だけをのせたベビーカーを押している男性、と思いきやそのうしろで女性に抱っこされている小さなこども。
絶えず降りつづけていた雨が、夜中近くになると大降りになった。若者たちがなにか張り上げる声。「ばいばーい」だけが雨粒の跳ね返る音をくぐり抜けて響く。窓のふちに打ちつけられる雨の音が、肌まで叩いているような気がする。