2022/12/13

昨日、誰より先にひとり起きていたふたつは、わたしが起きてリビングへ行くとものすごい甘えようだった。手の甲に腕に指先に脚に踵に鼻に顎にとあちこち額を擦りつけ、舐めて、甘噛みして、くっつく。動くとついて回るので、トイレに行くのも水を飲むのもあとにしてふたつの滑らかな毛をひたすら撫でた。今日、わたしたちよりもあとに起きてきたときのふたつは過不足ない顔をしている。足りるとか足りないとかは、わたしの尺度ではないだろう。待つこと、待つあいだに蓄積されるもの、あるいは足もとから流れ出していくもの。
改札を出て陸橋をゆくとき、前方のサラリーマンの頭上にのぼった白い蒸気で彼が息を吐いたのがわかった。加熱したざらめの香りがする。雨上がりの通りを歩いても、階段を下っていても、信号を待っていても、ベンチに座っていても、すれ違う人のことをなにも知らない。また同じ曜日にここで会っても、それははじめて見る顔だろうと思った。二度目に至らないどころか、一度目さえまだない。イヤホンからBiological Speculation。