ほぼ定刻でイスタンブール空港着。着陸後の美しい音楽がやけに郷愁的で時空が歪む。トイレで顔を洗ったあと出口に向かっていると、CAさんの移動と重なり、機内でお世話になったお兄さんが手をふってくれる。
到着エリアへ出る前にATMでトルコリラをいくらか引き出そうとしたが、手数料が高すぎてやめた。2018年開港のまだ綺麗な空港だが、Wifiはパスポートをスキャンするシステムで一日一時間のみらしく、ケチくさいなと文句を言う。しかたがないので一時間で今日のおおまかな予定を決める(夜行バスの予約以外は白紙)。市街地図のダウンロードをすませて、交通機関を調べて、あとはほとんど時間切れだった。ロビー内のATMをみっつ回り、手数料のいちばん安いATMで少額のリラを引き出す。とりあえず旧市街に行けばいいだろうということで、階をひとつくだってHavaistの12番バスに乗った。9:10ごろ出発。バスが空港を出ていく。この時期のヨーロッパの朝というのは、ほとんど夕暮れみたいな色をしている。イスタンブールも同じらしい。
Beyazıt Meydanıまで行くと書いてあったような気がするが、バスはAksaray終着だった。東へ歩いていく。12月になるというのに暑いくらいだった。
三十分弱でBeyazıt Meydanıに着くと、建物のあいまに水平線が覗く。お腹がすいていたしトイレにも行きたかったしWifiもほしかったが、ひとまず広場のベンチに座って、機内食のパンを食べて休んだ。ねこはたしかに多いが、いぬもいる。観光客と観光客のあいだで眠り、遊び、ときどき記念撮影にも混じる。
エコノミーかつ狭すぎずトイレのありそうなレストランを求めてひたすら歩き、ようやく辿りつく。11時45分。ケバブとミネラルウォーター。どでかいトラックがテーブルの角すれすれを通り抜けていく。気分を変えて歩く。ねこといぬと鳥がときどき小競り合いしながら行き交う公園。あちこちからトウモロコシを焼く煙があがる。
Wifiのあるところで翌朝のための情報収集がしたかったのと、充電もしたかったのと、なにより出国から30時間経っていて、荷物を背負ったまま歩きまわったので疲れすぎていた。Wifiはあるが繋ぐためにはまずネット回線が必要です、というお決まりのシステムに辟易し、パスワードで繋がせてくれるカフェを探して昼すぎから夜まで引きこもる。
いつのまにかネオンが灯った通りを抜けてスーパーへ行き、翌朝ブカレストに着くまでの非常食を買う。券売機でトラムの切符を買おうとしていたら若いおにいさんが突入してきて、親切に教えてくれるので場を離れようかと思ったが、どうも害がなさそうだったのでそのまま操作してもらった。おかげで買うつもりのなかったイスタンブールカードを買うはめになり、とてもいい笑顔でコミッション!と言うので、笑顔で元気よくお礼を言ったら手をふって去っていった。満員のトラムでAksarayまで、それからメトロM1線でOtogarへ。待ち時間にレンズ豆のスープ。とにかく眠りたかった。
みんな大好きFlixbusでブカレストへ。予約していた席に人がいたので変わってもらう。定時出発が叶いそうだったが、やたらと騒がしい修学旅行のような団体がどうも座席予約をしていないとかなんとかで座席騒動が勃発し、なぜか乗客のほぼ全員がバスを降り、どう話がついたのか再び乗りこみ、また彼らは大騒ぎをはじめていたが、すべてを強制終了するようにバスが動いた。とにかく眠ろうとした。