午後八時前、散歩に出ると、人だかりに遭遇した。休日で人出は多いが溜まりどころでもないし、なんか三脚を構えて待機している人もいるし、花火かなんかかな、と思ったら当たりで、八時から五分間、海沿いに上がる花火を眺めていた。花火っていいもんだねという素朴な感想が出るのは、予期していなかったからだ。予定を立てて友だちと会うのは楽しいが、ばったり会ったときのそれとは異なっている。むかし淀川大橋の渋滞で完全に流れが止まっていたとき、淀川上空にとつぜん上がった花火のことを、いまもときどき思い出す。予期をあえて避けるとそれはそれで不自然な期待がともなうが、予期しすぎないというのは生の支えなんだろう。意が介在しないと成り立たない生活のなかで、ときどき不意が射しこむ。
人も多いし散歩はまあいいかなと、動きはじめた人の流れに乗って帰る。まるで花火を目的に来た人になっていた。したことは同じで、動機だけが違う。