四足の像
ポッキーも溶ける札幌から、成田空港に着いてバスに乗る。青い日暮れに気分がくつろいできたときに、どかどか乗客が増え、わたしの心のスペースなどもうどこにもなかった。冷房をいじる通路隣の人間にも、前席の合間でいやに光るスマホゲームの画面も、白いサンダルに映える焼けた肌のつま先も、やまないおしゃべりも全部が嫌で、せめて照明を落としてほしかった。イヤホンを押しこんで目をつぶる。そういえば十代のはじめはだいたいこんな気持ちだった。過ぎることは消え去ることではないらしい。