2022/08/01

ロンドンの地図を見ていた。スローン・スクエアからチェルシー・ブリッジ・ロードを下るとテムズ川に出る。ここは歩いたことがない。海外ではいつも、なんとなくの地図を頭に入れてひたすら歩き続けるだけで、史跡とか庭園とかはあまり訪ねなかった。それを目指して行くことも時にはあるが、ほとんどが歩いていて見つけたものを、これはなにか有名なものなのだろうなと察して、ようやく調べてみるだけだった。
むかしは、宿やカフェに入って地球の歩き方などを開いて調べてみるのがやっとだったが、スマートフォンとWifiやらSIMやらが普及してからは、辺鄙な土地でなければ、その場で調べることができてしまう。これがあの!と思うこともあれば、威厳があるたたずまいなのに(少なくとも国際的には)大した価値が認められていないものもある。遺跡も、橋も、建築も。せいぜい地図に小さく名前が見つけられるだけの市場が、名の知れた市場より人も商売も充実しているように見えることもある。ここは行っておけばよかったとあとから思うことも多々あるが、大した後悔ではない。おなじ街にいて見たものと見なかったものは、それが日々の生活や学習の機会ならば損をした気にもなるけれど、観光において特別な差はないのだと思う。路傍であろうととるにたらない市場であろうと、旅先を歩いていて観えない光はない。
朝、今日も洗面所からなにか言っている吾輩の声。起きてからもすごくなにかしゃべっていた。冷房に怒っているか、遊ぼう!か、甘やかしにおいで、か。用事をしつつ、エルンスト・ルビッチ『生活の設計』を流し観る。